時代が変われば、店舗経営も変わる。インターネットの登場に代表される激動の31年間に幕を下ろした平成。AI、ブロックチェーンなどさらなる革新的技術が生まれる現代は、私たちが足を止めることを許さない。そして日本は令和時代に突入する。これからの時代に店舗経営者は何をすればいいのか?そのヒントを全4回の連載で明らかにする。
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目次
今回のテーマは「未来の店舗経営」です。
仁藤洋平(左)多田哲也さん(右)
今日は「未来の店舗経営」について話していきたいと思います。
今日のゲストは多田哲也さんです。
多田さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
株式会社KOKOMO代表取締役:多田哲也さん
多田さんのブログはこちら
主に香川で美容室を経営されてるわけですけど、今何店舗やられてるんですか?
香川を中心に美容室、マツエク、飲食店など9店舗を展開
全部で9店舗やってますね。
高松市にはなんと自社ビルを所有!
多田さんの経営する美容室 KOKOMO
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すごい立派なビルですよね。
自社ビルです。
5階建てで、1階から3階までをサロンで使って、4階は事務所にしています。
M&Aで購入した店を、育てて売却
「自分にとって新しいチャレンジでした」
で、さっきチョロッと話したら。2店舗はM&Aで売却されたっていうね。
「育てて売る」みたいな、自分の中では新しい形でやりました。
美容室と飲食店はやってたけど、マツエクはやったことがなかった。
だから、会社ごと買って、それを育てて売った(笑)
売った時は、毎月結構な売上が出てた?
「しっかり利益を上げているので価値がある」ということで、次の経営者さんにお渡ししました。
他業種にも積極的に出店
「飲食店もされてますよね?」
だから、多田さんみたいな経歴の持ち主は珍しいんじゃないかなと思うんですよね。
色々なことをやってる上に、色々な経営の仕方をしているので、珍しいと思います。
9店舗あっても、同じようなやり方をやっているお店が1個もない。
全て違うっていう。
お店毎に、自分のオーナーとしてのあり方があります。
「うちはこう」っていうんじゃなくて「この店の場合は、自分はこう」みたいな。
全ての店でやり方を変えている感じですね。
これもちょっと夢があるなあと思ったのは、自分は料理のことがわからないのに、飲食店をやってる。
そこが面白いですよね。
この間もお話しましたけど、わざわざ飲食の資格を取らなくてもいい。
調理師免許は別になくても。
それも1~2日の消防の講習みたいなのと一緒で、行けば取れちゃうようなのがあるわけですよね。
しかもメニューは自分で考えるんじゃなくて、外の人に作ってもらうんですよね?
自分たちで考えるより、詳しい人にお任せした方が良いので。
「今こういうのが流行っている」とか「今はこういう時代」っていうのが分かる人にメニュー展開して頂いてます。
メニュー開発を業務委託するような形ですね。
ある程度の味の料理が作れちゃうから。
それが商品になっちゃうというか、お店になっちゃうっていうことで、そこら辺も面白いなあと思ったんですね。
今日は多田さんの事務所で対談しています
「実はここは多田さんの事務所(笑)」
ということで、自社ビルで美容室やったり、飲食店もやったり、M&Aでマツエクサロンを売ったりしてる。
今日は麻布十番の多田さんの事務所で撮影してる(笑)
「事務所には美容室スペースも併設」
ぶっちゃけ家でやればいいですからね、自分の仕事って。
多田さん的に、事務所を借りたい理由があったんですか?
僕も持ちたいなって思うんですけど。
あとは、やっぱり外に出ることによって1回スイッチが入るから、仕事をする場所が外にほしいなっていう。
店は9店舗ありますけど、そのどこかにいるのはちょっと嫌なんですよね。
スタッフがいるから。
お店に行っちゃうと、スタッフに色々言いたくなるじゃないですか?
こっちがアドバイスしてると、どんどんスタッフが自立しなくなっちゃうんですよね。
余計なこと言いたくなっちゃうし(笑)
それは向こうもね。
向こうとしても、僕が働いてないように見えちゃうじゃないですか。
パソコン触ってるだけだと。
そうですね。
やっぱり業務内容が違うから、場所も違う方が良いかなと思いますね。
僕もそうですけど、外へ出てカフェとかで仕事をした方がちょっと切り替わるっていうか、スイッチが入る。
事務所だと1人で落ち着くし、集中できるしっていうことで、事務所を作ったわけですね。
とにかく異色の経歴を持つ多田さん
「美容師になったキッカケは何ですか?」
16歳で美容師になった
「高校を辞めて美容師になりました」
高1の終わり、高2になるかならないかぐらいですね。
その時にもう美容師を始めたくて。
スタイリストになるまでに免許を取るっていう。
18歳でスタイリストデビュー
「18でスタイリストになりました」
じゃあ、もう18…20歳ぐらいにはスタイリストになった?
すごい、それ。
20歳で店長になり、23歳で独立
「色々キッカケがあって、店を任された」
雇われで店長をやって、そこから23歳で独立しました。
相当早いと思うんですけど、雇われ店長の時も、結構売上を上げてたんですか?
ちょっと覚えてないですけど、今自分が雇用しているスタッフで考えると、かなり上のほうにはいたなっていう(笑)
アシスタントなしで月200万円売り上げた
「最初は1人で始めました」
言って大丈夫であれば。
最初1人だったんですよ。
その1人の時で、アシスタントなしで200万。
個人売上は最高月450万円
「とにかくがガムシャラにやりました」
一気に4人雇って、その後アシスタントがしっかりついて最高が450万ですね。
個人のアベレージは300万ぐらいです。
まず1人で200万上げるっていうのが……
だって、僕のクライアントにも1人でお店をされてる人がいますけど、1人で200万は聞いたことない。
12月の一番忙しい時は行く人もいますけど。
「死ぬほど忙しかった」って言ってましたね。
「休みの日を返上した」「営業時間外もやった」って言ってたので、やっぱりそれぐらいってことですか。
時間外、朝と夜とを。
休みの日も店に出てましたね。
独立したばっかりで売上を出したいっていうのもあるでしょうし。
でも、この走り方は一生続けられないなと思って、すぐ辞めました。
地方にこそ美容にお金を使う人がいる
「今の時代、地方が不利なわけじゃない」
東京だって、今そんなにいかないですからね。
単価でいうと、やっぱ都心のほうが高いっちゃ高いんですけど。
って言っても何割かの差じゃないですか?
僕が香川県高松市でカット6,480円なんですよね。
カラーして、トリートメントして、2万ちょっと超えるぐらい。
なので、価格もそんなにも変わらないと思うんですよ。
そんなにやり方としては変わらないかなと。
高松に行った時にお話させてもらいましたけど、結構お金を持ってる方もいるんですよね。
東京から高松に移住する人もいたり。
地方でもお金を持ってる人が集まる場所というか。
逆に使うところがないから残っちゃいますよね、お金が。
なぜ自社ビルを買ったのか?
「自社ビルを持った理由は・・・」
そのあと自社ビルを建てたのかなあと思うんですけど、なんで自社ビルを?
僕のイメージ的に、無駄だと思うんですけど(笑)
でも、夢みたいなところもありますよね。
今対談を撮らせていただいている事務所を持つこともそうですけど、夢のある話。
自社ビルもそういう気持ちで?
一等地にビルを持ってる美容師なんていない
「あの物件じゃなければ買ってません」
一応、高松市のメインストリートなんですよ。
商業地じゃなくて、ビジネス街。
大手企業の支店が集まっているような場所なんです。
その通りに自社ビルを持っている美容師なんていないわけなんですよ。
それがちょっと面白みがあるかなっていう。
常に尖ったことをやっていたい
「他と違うことをやらないと意味がない」
郊外のお店だと、土地ごと買っちゃって、1階がサロンで2階が家ってのはあるんですけど、
でも、自社ビルを持って、そこを本社にしてるところはない。
それが面白いかなと思って。
「ちょっと尖ったことをやってみたい」っていう気持ちは、その都度ありましたね。
じゃあ店長になって、独立したところから、そういう気持ちを根本的に持ってたんですね。
この事務所もそうですね。
お金の面だけでいうと、別に家でもいいし、カフェでもいいわけなんですけど、やっぱりあるのとないのでは全然違うので。
それによって上がる売上があったり、有益なことが分かってくるので。
そういう面での投資っていうのはあんまり惜しむべきではないですね。
自社ビルの場所は三越もある一等地
「すごい一等地にありますよね(笑)」
やっぱり融資ですか?
かなりの額ですね(笑)
地方なので、都心の土地のような値段じゃないですけど。
三越ありますよね?
四国だったら高松が一番栄えてる街?
遠くから買い物に来るような場所。
その中のすごい大通り沿いに立ってるじゃないですか、自社ビルが。
だから、皆さんが想像しているよりもすごい。
「ちっちゃい」っておっしゃってましたけど、全然ちっちゃくないし(笑)
東京的に考えるとそうですね。
夢もあるし、他の店がやってないっていうところで、それもある意味、投資みたいな感覚でやってるってことですよね。
今後も続々と新規事業を展開予定
「店舗以外のビジネスも準備していますよね?」
「これやりたい」って思ったことは、すぐやろうと思ってるんですよね。
仁藤さんもそうかもしれないですけど、物件選びで迷った時って、結局借りないじゃないですか?
借りたい物件って瞬時に「あ、これ借りよう」ってなるんですよね。
人とお金は後からどうにでもなる
「やりたいと思ったらやっちゃう」
僕もいっぱい店舗ありますけど、人がいるからとか、お金があるからとか、そういう云々で始めるわけじゃないです。
「これやりたい」っていう気持ちが勝っちゃって、後から人とお金をどうにかするっていう考えですよね。
どうにかなるんです、大体。
結局、仕入れて売ると薄利なので、ちゃんと良いものをオリジナルで作りたいなと。
で、シャンプーを作ってみたりとか、そういうことをしているうちに、ノウハウが分かってくるんですよね。
それで「次は化粧品を作りたいな」と思って、色々調べたり商品開発をしている内に、すごい当たりそうな商品を開発できちゃって。
じゃあ「日本だけじゃ面白くないな」ということで、今ちょっと取り組んでいるという形ですね。
日本ブランドって、中国とかだとやっぱ評価を受けやすいんですか?
やっぱり未だに強いですね。
「メイド・イン・ジャパン」っていうのは。
化粧品の海外展開は「ありえない額」の融資を受けた
「色々な集め方があるので」
それもすごい出資をしてもらえたっていうね(笑)
今回は融資じゃない形で。
本当に色々なやり方があるなって思いますね。
それも多田さんの人柄だったり、ビジネスの可能性を評価してもらえて、出資してもらえたのかなと思うんですけどね。
意見というか、考えは述べられるので。
自分のすることに迷いはないので。
飲み屋で仲良くなった人に出資してもらうことも
「酒の繋がりは多いですね」
僕はあんまり「人脈」っていう言葉は好きじゃないんですけど、人と仲良くなれる所で人間関係を増やしてるわけですよね。
最近は結構家に帰る生活なので、そうでもないんですけどね。
ただ「仲間と飲む」っていうのはあんまり好きじゃなくて、面白い出会いがある場所に行きたいという感じですね(笑)
群れるのは嫌なんですよ。
異業種交流会とかじゃなくて(笑)
ずーっと高松だからってのもあるのかもしれないですけど、そういうところで普通に飲み歩いて、単純に仲良くなるっていう。
飲み仲間としてみたいな。
そういう関係構築を今までしてきたのかなあと思って。
その時その時に自分が必要としている人というか、自分が話したい人、自分が色々聞きたい人が周りにいたなとは思いますね。
常に新しい出会いに投資する
「話を聞きたい人にはどんどん会いに行きます」
本当に出会いたい人、話したい人ならアポ取りますね。
こちらから、すぐ。
お店を出すとか、新しいビジネスをやるとか、ビルを立てちゃうとか、事務所を出すとか、全部自分が先を見据えてというか、夢を叶えるための先行投資じゃないですか。
だから人と出会うときも、投資は惜しまないっていう感じですよね。
だから本当に出会いたい人はダイレクトに行っちゃう。
そんな中でも、飲みに行ったりとかして、間接的にというか、偶発的に人脈を築いたり。
これを読んでる方も飲みに行ったりした方がいいですね。
SNSやってるだけじゃなくてね。
友達と飲むよりかは、話を聞きたい人と飲んだほうが絶対いい。
僕もやっぱり、すごい経営者さんとか、全然自分より歴が長かったり、売上も大きかったり、やってることが尖ってたり、「何か持ってるんだろうな」って思う人から聞くのが一番吸収できますよね。
同業種と飲みに行ってる暇があれば、どこか1人で飲みに行けよっていう(笑)
でもやっぱり同業種もいいと思います。
僕も結構飲みに行く同業種の人とかいるんですけど、やっぱり違うやり方で成功していたりするんで、認め合えたら楽しいですね。
どんどん成長してるというか、頑張ってる人とだったら別に同業種でもいいよっていうことですね。
多田さんのスタッフ教育論
「離職率の高い業界ですけど・・・」
店舗もたくさんあって、スタッフもたくさんいるけど、多田さんってメチャクチャ自由に動いてるじゃないですか?
最近は高松にあまり行ってないんですよね?
月の8割は東京です。
スタッフさんに給料も結構あげてると思うし。
スタッフ教育についてはどう考えてますか?
昔はよくいるワンマン経営者だった
「ある時「スタッフに任せよう」と思いました」
1~2店舗だった時って、やっぱり自分が全部やりたくなっちゃって、よくあるワンマン経営のオーナーだったんですよね。
自分がガミガミ言ったり、指導してって感じだったんですけど「それじゃ伸びないな」って思って。
店舗を増やして自分が離れたり、任せてみたりっていう段階を踏んで、今は10年勤めてるスタッフが結構な人数いるんですよ。
なので「10年も勤めて言われたくないだろうな」っていうのがやっぱり(笑)
「じゃあ任せよう」っていう、逆の発想ですよね。
結果を挙げてくれたらそれでいいかなと。
各店舗ごとに任せられる人がいたり、そもそも人がいるから店を出した部分もあったりするし。
飲食を出すことに決めた時も「こいつに任せるから出す」と決めたし。
なるようになっていて、今はどの店舗も任せる人はいますね。
本当に成功したいスタッフさえ残ればいい
「真剣なスタッフだけ残ればいい」
もちろんうちの店も、辞めるやつは辞めるんですけど。
多田さんの店は、比較的離職率が低いんですか?
すぐ辞めるやつは多いですけどね。
「合わなくて」とか。
それはもう追わないし、止めないですけど、ちゃんとやりたいヤツというか、本当に成功したいヤツは結構続いてますね。
月200万売り上げるスタッフがゴロゴロいる
「みんな売上は良いんですか?」
自分が作ってきた数字があるから、スタッフには「何でこの程度なの?」って言ってきたけど、客観的に見るとみんな売上げていると思いますね。
450万上げちゃったことがあるから、色々言いたくなっちゃうかもしれないですけど。
一般的に考えると良いですよね。
だって、200万いってる人もいますよね。
最低でも150万くらい。
高松でそれだけ給料もらってたら。
今後は経営を任せられるポジションを作りたい
「スタッフには経営者に近づいてほしいんです」
今はまだ行動には移せられてないんですけど、経営を任せられるポジションが育ってもいいなと思いますね。
じゃあ、興味があるヤツがいれば、高松の美容室は任せようとか。
雇われオーナーとまではいわないけど、店長じゃなくて、限りなくオーナーに近い立場を任せて。
徐々に多田さんの手から離れていって、ある意味、勝手に売上が上がっていくような状態にしていきたいみたいな。
やっぱりその方が本人たちも燃えるし。
「稼ぐ」って必要なことなので。
固定給を決めるんじゃなくて、経営者に一歩近づいてほしいんですよね。
どれだけ経費が掛かって、どれだけ上がりがあってとか、そういう計算ができる=経営ができるわけなんで、お店を出しても出さなくてもいいと思うんですよ。
本当そうですね。
スタッフの希望に応じて働ける環境を作りたい
「女性が働きやすい環境も考えています」
女性はまた違って「好きな仕事ができたらいい」っていうスタッフが多いですよね。
独立したい人のためにも、会社に残って上を狙いたい人のためにも、好きなことをやれる環境がほしい人のためにも、経営を経験したいひとのためにも。
僕が「良いな」と思うのは、多田さんの店にいたら飲食店をやれたりもするじゃないですか?
現場にいなくてよくなれば。
美容の商品を作ることもできるし。
多田さんに色々相談に乗ってもらえるだろうし。
だから、向こうから色々提案をしてもらいたいですよね。
次回は「理美容業界の平成の遺産」について話します!
「次回は「理美容業界に思うこと」について話します」
「こんな人いるんだ」みたいな。
何百店舗もある大手チェーン店の社長とは、また話が違うじゃないですか。
1人サロンから始めて今があるわけじゃないですか。
9店舗出して、自社ビル持って、海外でも展開してて、色々な業種のビジネスをやってる。
ということで、多田さんのやり方は参考になるし、勇気をもらえるんじゃないかなあと思うんですよね。
「自分も頑張ればこうなれるんだ」みたいな。
ということで、次回以降も色々と話を聞いていきたいと思います。
次回は「理美容業界に思うこと」について話していきたいなと思いますので、楽しみにしていてください。
じゃあ、今日はありがとうございました。
もはや「店舗経営者」という言葉では収まらないほど、スケールの大きな活動をされている多田さん。そんな多田さんの経営のヒントを次回から紐解いていきます。
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